君がいたから

「上総は、いま、入院してるんだ」
「え?」

言葉の意味はわかっていた
だけど、信じたくなかった

「上総は今、入院してるんだ」
「どうしてっ」

俺の問いに先輩は一呼吸置いて

「座って話そうか」

優しく穏やかに
さっきとは正反対の声色で言葉を発した

その言葉を聞いて
一番先輩に近い椅子に座る

「上総は、生まれつき体が弱かったんだ」

静かに言葉を繋げていく
聞くのは怖い・・・
でも、今、聞かなきゃ、きっと後悔する

「今までは、何とか学校にこれてたけど
 もう限界が来たって、医者が言ってた」

嘘だ、
あんなに元気だった
いつも明るくて、とてもそんな風には見えなかった


いや、本当に?
本当にいつも明るかった?

違う、
いつも笑顔なだけじゃなかった
不意に見せる
どこか遠くを見る瞳
悲しそうにゆれる瞳

それを見て無かったのは俺だ

「コレ」

先輩が一枚の紙を手渡す
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