嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「おい!!!
この子、マジ可愛い!!!」
となりの席で、
少年誌の漫画を見ながら
声を上げる男子がいた。
表紙には、
水着姿のグラビアアイドルが写っている。
私はカバンを抱え、
自分の席に腰を下ろし、
机に顔を伏せた。
……またいじめられるかもしれない。
そう。
私は小学生の時、
いじめにあっていた。
空気のように扱われ、
クラス中から無視され続けていた。
物を隠されるのは当たり前で、
少し目立った行動をすると
陰口は叩かれる。
だから、
私が裸で写真を撮られ、
それが誰かの目に留まったら……
絶対にバカにされ、
また汚いものを見るように、
無視されるかもしれない……。
「葵?やっぱ元気ないよ。
どうした??」
紗希が顔を覗きこみ、
目をキョロキョロさせる。
今、友達と普通に話せる生活が
本当に幸せだった。
この生活を壊したくない……。
「大丈夫!!何でもないよ!」
心配そうに見つめる紗希には
笑顔で答えるが、
心の中までは完全に動揺していた。
私はどうなってしまうのだろう。
……こんなこと誰にも相談出来ない。