Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
ハリーはゆっくりとしゃがむと、震えるサラを優しく包み込むように抱きしめながら、耳元で囁いた。

ハリー「大丈夫……。君は悪くない……。
安心して……。落ち着いて……。俺がついてる……」

小一時間ほどして、ハリーの肩を掴んで離さなかった手の震えが止まり、ゆっくりハリーを押し離す。

サラ「ありがとう……。もう、平気……だから」

ハリー「……。よっ!っと」

サラ「きゃっ!?」

腰を両手で挟み込まれ、軽々と宙に浮いたサラが次に着地したのはベッドの上に座ったハリーの膝の上だった。

サラ「な、何するの?」

顔を赤らめ、背後にいるハリーを見てサラが言う。

ハリー「意地っ張り」

反論は許さないとばかりに、ハリーはサラの胸の前まで手をまわし、サラをホールドしてから囁いた。

ハリー「無理に忘れろとは言わない。君は、まだ受け入れる準備ができていないんだ。ゆっくり……受け入れればいい」

ようやくわかった。

今の自分に必要な場所は、雨風を凌げる家などではない。この、あたたかい腕の中なのだ。

サラ「……うん……」

自然、笑顔になる。
思いを重ねるように、胸の前で組まれた大きくあたたかい手に触れる。

ふと、唐突に浮かんだ疑問を口にする。

サラ「ねぇ、ハリー。あの時どうして私を助けてくれたの?」

ハリー「ん?そうだな……」

ハリー「天使を、見つけたからさ」

そう言って、ハリーはサラの前髪を手で分け、おでこにキスをした。

サラ「───クサい」
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