Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
むしろ、気持ちがはっきりしたことで、サラの感情は今までにないくらい弾んでいた。

サラの世界観がガラリと変わった。

全てがバラ色に見えた。

夢のような素晴らしい日々が続いた。



───はずだった。



ある日の夜、
ハリーは仕事の手を休め、椅子に座って読書に耽っていた。サラはハリーの以前の『シチュー思い・つけ あがり事件』の報復のために、最高の料理を作ってハリーを見返すのを目的に食材の買い出しに出掛けていた。窓のカーテンの隙間から月の光がわずかに見える。今夜は満月らしい。

ふいに玄関が開き、サラが帰ってきた。

ハリー「おかえり。サラ」

振り返ることなく、ハリーは帰宅したサラに声をかける。

「へぇ、いい所に住んでるじゃない」

サラのおかしな言葉に、何の冗談だろうと本に目を落としたままハリーは椅子ごと振り返る。

ハリー「何言ってるんだよ?」

「貴方がハリー・クルーガーね」

今度こそおかしな発言をするサラに、本から目を離し顔を上げるハリー。

すると、出かける時とは違う服装をしたサラがそこに立っていた。

艶やかに光る黒い革ジャンに、派手なロゴ入りのシャツ。胸元に輝くアクセサリーは相当高価なものに違いない。
革ジャンに合わせた黒いデニムのスカートに黒タイツで、美しさにより磨きをかけている。

ハリー「だから何を言って───」

言いかけて、ハリーは本を床に落とした。いや、落とさざるを得なかった。
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