Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
有り得なかった。
眼は確かにウィラを捉らえ、ありったけの憎しみを込めたというのに。
ウィラには傷一つなく、何事もなかったかのように、平然とした顔で砂煙から生還したのだ。

もはや驚愕というにはあまりにも有り得ない状況にサラはまったく身動きできなかった。

ウィラ「あなたの私に対する憎しみってその程度だったんだ?いいわねぇ。……でもね、私のあなたに対する憎しみはこんなものじゃないわ!」

ウィラが激昂の表情を浮かべたかと思うと、サラの下腹部に激痛が走り、サラの体は二十メートルばかり吹っ飛んだ。

サラの体は何度か地面にバウンドし、ごみくずのように地面に転がった。

あまりの痛みに息ができなかった。何とか仰向けになると、口から吐血した。

サラが転がった跡が地面に深々と爪痕を残している。

服は所々破け、体のあちこちは傷で埋めつくされ、骨も間違いなく背骨とどこかが折れていた。
血がとめどなく流れ、息は少しできるようになりはしたが、それでも、今のサラの状態は、間違いなく致命傷だった。

そんなサラの状態など知ったことかといわんばかりに、ウィラは話し続ける。

ウィラ「憎しみを抑えることで、対象を殺さずに傷つけることができるわ。
……痛む?痛むでしょうね。……でも、私が受けた傷と比べるとかわいいものね」

怒りを込めた声でウィラは言う。
その一言一言にははっきりとした深い憎しみが宿っていた。

ウィラが歩み寄ってくる。
動かなければ、反撃しなければ殺される。

動け、私の体───!

自分に何度も何度も言い聞かせるが、激痛が邪魔をする。

───痛い。

生まれて初めて味わう眼の力による痛み。

< 42 / 90 >

この作品をシェア

pagetop