Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
目の前に死を待つしかない人がいるというのに何もできない。

あの時も。

あの時も。

自分は。

あまりにも、無力だ。

それでも。

大切な人達の死を思い返すと涙が流れずにはいられなかった。

俯いたままいると、頭の上からもうすでに泣き止んだ女性の声がかけられた。

「こんな死にぞこないのために泣いてくれてるの?
……ありがとうね。アンタは優しいねぇ」

言って女性はサラの頭を優しく撫でてくれた。
そのいくつもの困難を乗り越えてきたであろう温かく朗らかな手で。

途端悔しさが込み上げてくる。

こんな。
こんな優しい人が外国にいるなんて。

こんな人が病で死ぬなんて。

理不尽だ。

あんまりじゃないか。

何が特待生。
何がボランティア。
何もできない。

介護するだけで誰一人救えやしない。

すぐ傍にいるご老体の内に潜む悪病を取り除くことなど到底無理だ。

この女性も自分も、今はただ恨めしげにこのガンを───。





とうとうサラのボランティア活動も最終日を迎えた。
名残惜しさも一塩な施設へと続く道。
長いようで短かったなぁと物思いにふけっていたその日、施設に着いたサラを待っていたのは、大胆に飾り付けを施された介護室だった。
スクリーン大の紙に書かれている「Thank you」の文字。
そしてその周りに貼ってある
「サラちゃんありがとう」「元気でね」
などの福祉センターに通う高齢者達一人一人の寄せ書き。

その他、窓や天井に張り巡らされたモールやリボンの鮮やかさ。

一面花畑のような部屋に入ったサラは感動に打ちのめされる。

するとたくさんの拍手とともにサラがこれまで担当をしていた高齢者の方々が、どこからともなく現れた。

高齢者のほとんどが車椅子だったが、立っている高齢者もいた。
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