Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
ストリクト「さて、それでそのモルモットですが……結論から言うと治っていません」

サラ「……え?」

あんな小さい傷が?

検査から何週間も経っているのに?

幼い子供だって傷を負ったとしても、時が経てば治る。完治とまではいかないが、生物にはある程度傷を負っても、医学的治療を受けずとも、自ら一定の規模で体の異常を治す『自己再生能力』または『自然治癒力』というものが備わっている。

わずか一ミリにも満たない傷が、何週間も経っているのに完治していないわけがない。

サラ「それは……あの」

ストリクト「どれだけ待っていても、どれだけ医学的な治癒を施しても、モルモットの傷が癒えることはありませんでした」

サラ「それ、って」

ここまで言われてピンとこない人はいないだろう。

まさかと思う結論に背筋が寒くなる。

ストリクト「つまり、貴女達の眼で付けられた傷は”決して癒される、または再生することも不可能”ということです。
この推測は貴女が介護センターで高齢者のご婦人のガンを消し去ったことがきっかけでした」

最強最悪の能力だ。

この眼に睨まれれば避けることも逃げることもできない。

しかも、憎まれれば元通りに再生することも治癒することもできない

サラは静かに自分の胸を見つめる。

十二歳から十六歳の間、豊満に育った胸。その胸には未だ癒えていない大きな醜いバツ印が刻まれていた。

あの時、ウィラが自分の胸に付けた傷。
ストリクトは貴女達と言った。
自分が生まれた時に、先に生まれた姉の胸に自分が付けた傷。


その傷が、一生癒えない傷になるなんて。

ストリクトは腕組みして何やら考え事をした後、ゆっくりと話し始めた。

ストリクト「……そうなると、これも推測ならばよいのですが……。
おそらく、貴女の眼は、科学的にも物理的にも関係なく、全ての対象を破壊することができるでしょう。
つまり、貴女が海を憎いと思えば海が消え、空が憎いと思えば空が消えます。
それはたとえ今私達を取り巻いている空気でさえ例外ではなく、もっと言えば、この世界そのもの。宇宙すら消し去る事ができるでしょう。
……貴女がそれを臨むならばね」

ストリクトはこの説明は推測だと言ったが、その言葉の全てに力が篭っていることから、ストリクトはもちろん、当の本人であるサラにもその説明が真実であるということに、薄々ではあるが気付き始めていた。
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