Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
ストリクト「憎しみで発動する眼……言うなれば、『Hateful eyes』……とでも言うのでしょうか」

サラ「Hateful eyes……全てを破壊する……私の眼……この眼に……そんな能力が………?」

最凶の眼。

人も病気も物体も空気も、山も海も空も惑星(ほし)も宇宙も。

全てはサラの憎しみと選択範囲次第。

おそらく漫画や映画の世界でも、この能力に勝るものはない。

不可避にして絶対。
この眼は、死を常に司り、サラの憎しみによる発動命令を今か今かと待っている。

Hateful eyes。
『憎しみに満ちた眼』とでも訳すのか。

サラの憎いという感情に反応するそれは、ほんのわずかの憎しみにすら反応するので、サラは感情をコントロールするのに日々地獄のような苦しみを味わってきた。

少しの憎しみで発動するのだ。
行列で待たされている時も、ぶつかってきた相手が逆ギレしてきた時も。

憎いの「に」でも思えば次の瞬間にはボン、だ。

怒りを解き放ちたいという願望が頭の中で炸裂する度にサラは苦悩する。
感情を殺さないと。
必ず何かがコワレテしまう。

だから───殺してきた。

自分を。

憎いと思う感情を。

対象を憎いと思う自分を何度も何度も殺してきた。

それでも。

それでも今は。

居たいと思う場所ができてしまった。

守りたい日常ができてしまった。

かけがえのない人達が周りにいる。
そんな小さな幸せだからこそ。
せめて今は噛みしめていたい。失う時が怖かったから
目を背けていた現実、幸福、人望。

全て揃っている。

だけど現実は、そういう時にこそ幸せを奪いにくる。

だから。

せめて今、この時くらいは儚いユメを───。

ストリクト「サラ」

サラ「はい?」

ストリクトの呼びかけで我に返る。
ストリクトは真直ぐサラを見つめていた。

ストリクト「私は一年前に娘を亡くしました。
交通事故で、反対側の車がぶつかってきてね。
私だけが助かり、娘は即死だった。
相手を許せなかった。でも憎まなかった。娘が返ってくるわけではないから。憎しみは何も生み出さないから
貴女にも貴女のお姉さんにも言えることだけど、人を憎むのではなく、愛してあげなさい。
そうすれば憎んだ人が、救いが必要な可哀相な人であることがわかるはずよ」

サラは一礼をして部屋を後にした。
耳にストリクトの言葉がこだましていた。

『憎むのではなく、愛して』───。
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