Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
マーク「サラ」

部屋から出てすぐ。
窓際にいたマークに声をかけられる。

緑のYシャツにどこにでも売ってそうなジーンズ。
サラサラな黒髪が綺麗な、眼鏡をかけた背の高い青年が、日の光が差し込んでくる窓をバックに微笑んでいる。
……銀歯が見えたのは黙っておこう。

サラ「マークさん。どうしたんですか?」

マークは照れるように笑うと、サラに向けて言った。

マーク「その……僕と、付き合ってくれないか?」

マークの顔がみるみる赤く染まり、まるで林檎。マーク自身覚悟はしていた。
ただサークルが同じというだけの関係。
それだけの男女の仲のはずが、何を血迷ったのか大学のトップアイドルに愛の告白だなんて、罰ゲームか何かでなければできない行動だ。

サラ「いいですよ」

マーク「あは、そうだよね。そんなの無理に決まって───ええ!!??」

予想外のカウンター。

あっさりとした返答。
目の前のアイドルは、少しもためらうことなくマークの交際希望宣言を承諾した。

ここまですんなりいくと逆に引く。

ひょっとして、こいつ実は無類の男好きで、アイドルという地位をいいことに男を取っ替え引っ替えしている魔性の女なのかっっ……!!??

サラ「でもどこに行くんですか?私、ここに来て結構経ちますけど、まだこの辺に詳しくないんですよ」

あどけない顔で次々とアッパー、ジャブを繰り出すアイドル。

サラ「あっ、もしかしてこの間言ってた新しいカラオケ屋に行くんですか?」

とどめのストレート。
完全に予想を外れたサラの言葉にマークは翻弄されていた。
というか、見当違いも甚だしい完全なる勘違いである。

この日この瞬間のために恋愛系の小説や雑誌を読みまくって告白の方法や女性の口説き方をマスターしたというのに、それら全てにかかった、日本円にすると5桁を越える費用が犬死にだ。

マーク「えと。あのそういう意味じゃなくて」

サラ「……ごめんなさい」

マーク「え?」

自分の気持ちが伝わらないことで焦りを感じていたマークをよそに、目の前にいるサラ・フィーラスは俯いていた。

すると、サラの足元にポトポトと雫が滴り落ちた。
見れば彼女は泣いている。
そんなに自分の告白が嫌だったのだろうか?

サラ「ごめんなさい。気持ちはとっても嬉しいの……。
告白なんてされたの初めてだし、私を女の子として見てくれたこと……。でも……」

サラはそれ以上言い出せなかった。
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