xxxFORTUNE
頭を窓の外から引っ込めて、まだ空を眺める彼に質問。
「願ってないよ」
そう答えると、空からあたしへと視点を変える。
交わった視線に首を傾げれば、相手はあたしの片手を取って握った。
「ありがとうって言ったの」
重なる手からは、ぬくもりを感じる。
「ぼく、つらいことだらけで、ちっとも人生なんて面白くないって思ってたんだ」
手を繋いだまま外を見る彼につられて、再び外に向けた顔。
どこまでも、広い夜空は続いていて。
その漆黒の絨毯に、星が輝きを灯している。
遠くの空で、月は街を見下ろしていた。
数ヶ月前、この窓からあたしたちは落ちた。
そして………。
忘れかけていたけど、あの時の魔法は、いったい誰が使ったのかしら。
「でもねっ、ヒメに出会って楽しいこともあるってわかった」
蘇る記憶を遮るように、佐久間さんの声が被さる。
こっちへ向き合うと、繋いでいたあたしの片手を両手で包み込んで
「だから、ありがとう」
声を失うほどに、無垢な笑顔が向けられる。