xxxFORTUNE









コンコンとノックをして数秒。

返事が聞こえないから、恐る恐る部屋に入る。


ドアと壁の隙間から、漏れる小さな光。

相手を考えても、まだ起きているのだと予測できる。



「今日はお泊まりできるの?」

後ろ手で扉を閉めて部屋に入ると、床に散らばった何十冊もの本たち。


「部屋の片付けを理由に、一応宿泊許可はもらってあります」

きっと、自宅に部屋のものを移動させるのね。

さすがに棚やベッドの家具類は置いておくのだと思うけれど。



「傷は大丈夫?」

「少し痛みますが、すぐ治るはずです。
人間の自然治癒力は想像以上にすごいですからね」


それまで本を見ていた誠は、近寄るあたしを見上げる。

再び手元に視線を落とすと、横に座ったあたしへ向けられた質問。


「あなたは、決めたんですか?」

「決めるもなにも、エシャルに戻らなきゃいけないから」

「そうですか」


トントンと、本の重なる音。

大きさや種類別に、分けているみたいだ。


時折、手に取った本をパラパラと捲っては読んで。


淡々とした作業じみた動きを、黙ったままただ目で追った。






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