xxxFORTUNE
◇
コンコンとノックをして数秒。
返事が聞こえないから、恐る恐る部屋に入る。
ドアと壁の隙間から、漏れる小さな光。
相手を考えても、まだ起きているのだと予測できる。
「今日はお泊まりできるの?」
後ろ手で扉を閉めて部屋に入ると、床に散らばった何十冊もの本たち。
「部屋の片付けを理由に、一応宿泊許可はもらってあります」
きっと、自宅に部屋のものを移動させるのね。
さすがに棚やベッドの家具類は置いておくのだと思うけれど。
「傷は大丈夫?」
「少し痛みますが、すぐ治るはずです。
人間の自然治癒力は想像以上にすごいですからね」
それまで本を見ていた誠は、近寄るあたしを見上げる。
再び手元に視線を落とすと、横に座ったあたしへ向けられた質問。
「あなたは、決めたんですか?」
「決めるもなにも、エシャルに戻らなきゃいけないから」
「そうですか」
トントンと、本の重なる音。
大きさや種類別に、分けているみたいだ。
時折、手に取った本をパラパラと捲っては読んで。
淡々とした作業じみた動きを、黙ったままただ目で追った。