xxxFORTUNE
「いや、魔女というべきでしたか……」
そうして、今度はまとめた本を袋に詰めていく。
何気ない優しさが嬉しくて、じっと誠を見つめる。
自然と肩の力が抜けると、口角が上がったのが自分でもわかった。
「ありがとう。
あたし、自分を大切にするわ。
猫かぶったってバレちゃうものね!」
性格をよく見せようとしたって、絶対に襤褸(ぼろ)が出る。
魔法が上手に使えるフリをしたって、実際上手じゃないんだから意味のないこと。
「そうですね、あなたは全て表情に出てしまいますから」
少しだけ、前向きになれた気がする。
そっか、ありのままでいいんだわ。
無理してお姫様を作らなくても、きっと大丈夫。
張り詰めていた感情が、プツンと切れて解かれた。
里音との会話で寂しくなった。
佐久間さんとの会話で儚さを感じた。
恋千くんとの会話で切なさが込み上げてきた。
涙が止まらない。
すぐ近くで聞こえたため息の後、誠のぬくもりがそっとあたしを抱きしめる。
「誠って、優しいのね」
「今頃気付いたんですか」
嬉しさと悲しさの入り混じった雫が、真っ直ぐに頬を撫でた。