xxxFORTUNE
◇
明かりがついていたから部屋に入ったのに、声をかけても返事がない。
ベッドの前まで行って、やっと相手が眠っていたのだと気づいた。
寝てるなら仕方ないか。
あきらめて部屋を出ようとした瞬間
「……帰りたい」
そんな呟きが耳に入り込んできたから、またベッドの真横に戻る。
「どこへ?」
疑問を無意識に声にして顔を覗き込んでいると、長い睫毛が揺れた。
「………ん…、あ?」
目を開けた彼は、あたしを見るなり眉間にシワを寄せて。
「“本当の家”に帰りたいの?」
首を傾げるあたしを睨みつけつつ、上半身だけを起こしてベッドの上で胡座をかく。
「なにしてんだよ」
ものすごく不機嫌に言い放つと、手元にあった枕をあたし目掛けて投げてきた。
「いったぁ……いきなり暴力なんてヒドい!」
いつもの癖で言い返すと、ますます怖い顔を向けられる。
愛琉さんは、寝起きが悪い。
それは、理解してるつもりだったけど。
「勝手に人の部屋入って、しかも謝罪がねぇってどういうことだよ」