xxxFORTUNE









明かりがついていたから部屋に入ったのに、声をかけても返事がない。

ベッドの前まで行って、やっと相手が眠っていたのだと気づいた。


寝てるなら仕方ないか。


あきらめて部屋を出ようとした瞬間

「……帰りたい」

そんな呟きが耳に入り込んできたから、またベッドの真横に戻る。



「どこへ?」

疑問を無意識に声にして顔を覗き込んでいると、長い睫毛が揺れた。


「………ん…、あ?」

目を開けた彼は、あたしを見るなり眉間にシワを寄せて。


「“本当の家”に帰りたいの?」


首を傾げるあたしを睨みつけつつ、上半身だけを起こしてベッドの上で胡座をかく。



「なにしてんだよ」

ものすごく不機嫌に言い放つと、手元にあった枕をあたし目掛けて投げてきた。


「いったぁ……いきなり暴力なんてヒドい!」

いつもの癖で言い返すと、ますます怖い顔を向けられる。



愛琉さんは、寝起きが悪い。

それは、理解してるつもりだったけど。


「勝手に人の部屋入って、しかも謝罪がねぇってどういうことだよ」






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