xxxFORTUNE
頷くと、なぜか里斗くんは残念そうに笑った。
「明日か。
お姉さん、名前は?」
「すず」
すると、傘を一度見てから再びあたしを見て
「すずお姉さん、兄ちゃんの特別なんですね。
兄ちゃん、あんまり自分のこと他人に話したりしないから」
悪戯好きの子どものように、無邪気に言った。
時折顔を出す純粋さが、兄弟でそっくりね。
「里斗くん、あなたのお兄さんは独りじゃないわ。
だから、里斗くんは自分の幸せを一番に願って」
笑顔を浮かべ無言で頷くと、彼は雨の世界へと溶け込んでいった。
お母さんへの誕生日ケーキと、お兄さんの大きな傘と一緒に。
四つ葉のクローバー。
結局、半日くらい外を歩き回っていたのに手に入れられなかったわ。
早く家に帰って、佐久間さんにハンバーグを作ってあげなきゃ。
急かす気持ちに促されて、土砂降りの中を駆けだした。
あと少し、あと少し、と洋館に近づく度に、水を吸った服が重さを増していく。
寒い、頬が熱い、視界が………。
遠くで、“鈴”の音が聞こえた気がした。