xxxFORTUNE
「傘なら、また買えば大丈夫だから」
繰り返し大丈夫と言って、それから力が抜けたように頬から冷たい手が離れた。
「すずが無事で、安心した」
いつもの知ってる声の調子に戻って、ベッドに寄りかかるように座り込む。
あたしが傘をなくしたって、勘違いしてるみたいだけど…まぁいっか。
ベッドに肘をついて見上げてくる彼は、小さく笑う。
「熱があるだけ?
どっか痛かったりしない?」
「大丈夫よ」
今度は、あたしが大丈夫を何回か繰り返した。
「あんまり無理するなよ。
今度からは、傘がない時は電話して。
迎え行くから」
「……うん」
あたしの返事を聞くと、すっかり笑顔になって里音が立ち上がる。
頭を撫でられたかと思うと、そっと手が離れた。
部屋を出ていく彼を見て、思い出した伝言。
「里音、」
「なに?」
「幸せだよ、って。
里音の家族からの伝言」
微笑んでおやすみと続けたあたしを、疑問符を浮かべて見つめてくる。
「おやすみ」
やがて、考えるような表情をして部屋を出ていった。