ONLOOKER Ⅲ




「直ちゃん、ほんとはあの時、聞いてたんでしょ」

不意に恋宵の口からそんな言葉が出たのは、直姫と聖が中庭で伊王夫妻と会ってから数日後のことだった。
生徒会室で、たまたま2人になったタイミングでふと思い出して、この間ご両親に会いましたよ、と言った。
恥ずかしそうにしながらも少し嬉しそうな恋宵が印象的で、その直後に呟くように落とされた言葉に、上手い反応を返せなかった。

「……え、いつ」
「渡り廊下で、あたしと乃恵ちゃんが話してるの。聞いてたんだよね?」

ほんの少しの沈黙の後、はい、とだけ答えた。
横顔しか見えない恋宵は、少し笑っているように思える。


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