ONLOOKER Ⅲ


生徒会室には、何の音もなかった。
ただしんしんと空気が流れる気配と、時折誰かが鼻を啜る音と、さらに稀に、内緒話のように囁く声がするのみだ。
それだけで十分だった。

「ねぇ、泣いてよ」
「……いやにょろ」
「なんで」
「泣き顔、かわいいにょろよ? ひじりんが困っちゃうくらい」
「えー、どうしようかな。それじゃ」

これで顔見えないよ。
背中に感じた温かさと、耳許を掠める低い声と、右頬に触った金色の髪に、少女は、目を閉じる。

「見ないでね」
「それは約束できないな」
「、なんでよ」
「泣き顔、かわいいから」
「ばか」

パステルイエローのカーディガンを握りしめて、少女は、久し振りに泣いた。
彼は深い深い焦げ茶とも黒ともつかない猫っ毛に頬を寄せながら、少女が世界一優しいと言った、あの苦笑いをこぼした。


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