ONLOOKER Ⅲ
会話の内容も声色も、穏やかで、どこか和やかな空気が流れている。
しかし、おどけた言葉を発する少女の口許は、少しずつ、確かに歪んでいっていた。
「この前、ご両親に会ったよ」
「それ、直ちゃんからも聞いた、……にょろ」
「恋宵をよろしくねって言われちゃった」
「にゃに、それ」
「新曲、10枚は買ってね、だって」
少女の髪を弄りながら呟くように言った彼の言葉に、少女は一瞬、声を詰まらせたようだった。
鼻を啜る音が聞こえる。
すぐそばにいるのに、顔を背けたままの2人に、互いの表情は分からない。
「まだ言う? こんなことしてていいのかなぁ、って」
答えがないことに、彼は、苦笑いを浮かべた。
いつか少女が好きだと言った苦笑いだ。
毛先を絡めて遊んでいた指先は上にあげられて、手のひらが頭に乗る。