インサイド
 毎日毎日巡る時間を、どれだけピアノの側で過ごしていることだろう。当たり前に、だ、それも。

四月からこっち、さぁ練習とかピアノを弾かなきゃとか、思ったことがあっただろうか。

貪欲なほどの、好奇心のような、飽くことのない音ばかりの日々。

とりあえずは三年、これが続いていくのだ。毎日毎日。

入学式の前のように、楽しみが広がり胸が躍る。

約束された幸せを、改めて確かめた気持ちに。

「あのねっ、楽譜室、行ってみたよ。すごい量でびっくりした。あれはじっこから弾いていったらどこまで行くかなとか考えちゃった」

「それやってる先輩いるよ。三年生で四段目だって」

「うわー。そんな人、すでにいるんだ」

「見た目からは絶対わかんない、中身すごい変わった先輩。よくこの辺にいるんだけど、今日は居なかったな。いつもの部屋に」

「それはすごい会ってみたいかも」

「すぐ会えるよ。すごい有名人だから、もう会ってるかもしれない」
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