lacrimosa
「サーシャ、」
『…大好き』
ぎゅ、と抱き寄せたその細い躯は小さく鳴いて。ミシリと音を立てたその無様な骨の翼。
けれど、まだちゃんと天使の匂いがした。
若草薫る陽の光の匂い、温かくて、ふわふわしていて
「僕も、大好き」
あああ、アンジェロ。
全世界の人間を幸せにするために、こんなに身を滅ぼす必要なんてなかったのに。
あなたは私と自分自身を幸せにすることだけを考えていれば、よかったんだよ。
それだけで、
私たちが2人一緒に居るだけで、こんなにも幸せは満ち溢れるのだから。
『…ね、この羽、私が使ってもいいの?』
なんとなく、その時にはもう迫り来るそれの正体を悟った。
「うん、いいんだよ…」
『これで私は幸せになれる?』
「ふふ、多分ね」
あああ、アンジェロ。
なんで解らないのかな。
私の幸せは…、私の幸せは、
『じゃあ、遠慮なく…使わせていただきます』
涙声になった自分が情けない。
その温かいか弱い躯を壊してしまう程に思い切り抱き締めたくなる衝動を必死で抑えた。
(…ばか、)