lacrimosa
(…行かないでよ、アンジェロ)
「ほら、はや…く。
色が変わっちゃう前に。僕が完全に堕天になる前に…
はやく…」
サーシャの瞳から生温かいものが流れ落ちる。
彼女は迷っていた。これかり自分がすることは果たして、正しいのだろうかと。
「…はやく、使って。願い事を…言っ、て」
再びアンジェロの息がだんだん荒くなる。
普段バラ色の頬は青白く、それでも幸せそうな微笑は消えないけれど。
(…泣けば、いいのに)
アンジェロだって同じ年の子供なんだから、泣けばいいのに。
泣きじゃくって助けを求めれば、精一杯に支えてあげるのに。
(…アンジェロはそれを望んだりしないんだ)
いつだってそうだった。
怒ったのも泣いたのも弱音を吐く姿さえ目にしたことはない。
サーシャはそれを心から尊敬していて、憧れて、同時にチクリといつも痛かった。
―――けれど
その強さの裏には友達を死なせてしまったという深い深い後悔があったんだ。
だから、あんなに強く笑って――――
「サー、…シャ」
ああ、今この瞬間でさえ、あなたは。