辛口男子の甘い言葉
「…奈絃…あれは?」
ふと見上げると広瀬は少し表情が暗かった。
あれ、のことは何の事かすぐに分かった。
そりゃ毎日付けてたのを急につけなくなったら、嫌でも分かるよね。
「…………。」
でも理由を言えなかった。
来るなって言われたのに広瀬の跡をつけて、他人に取られました、
なんて言える訳がなくて…。
ただ黙るしか出来なかった。
「…どうしたんだよ。」
「……………。」
「もういいわ、勝手にしろ。」
答えようとしない私に痺れをきらしたのか、背を向けて行ってしまった。
やっちゃった…
「はっ…嫌われた…かなぁ……」
こんな所で泣きたくなかったのに。
やっぱり、押さえきれなかった。
今まであんなにバイトに行くのが楽しかったのに、一瞬にして行きづらい場所へと変わった。
もう、今日はバイトは休もう。
私はすぐに店長へ連絡を入れた。
そして、ただひたすらあの外国人が来るのを待った。
待ち続けてはや4時間。
取り返すためなら、なんて事ない時間だった。
働く広瀬を時々見ながら、来るのを待っていると、やっとチャンスがやって来た。
あの外国人が店の横の道から出てきたのだ。
私は静かに移動して、外人に声をかけた。
「ちょっと待って!!!」
「!?」