辛口男子の甘い言葉
「私のゴム!返してっ!!」
「それはできない、ゴメン…。」
「えっ…あっ、待って!!」
また走り去ろうとしたから、私は咄嗟に彼の服を引っ張った。
が、力が入りすぎて、2人とも後ろに一緒に倒れてしまい、外国人の背中が私の上にある状態になった。
「いったぁ…。」
頭がズキズキと痛む。
どうやら不細工な転け方をしたらしい。
地面に叩きつけられた衝撃で、私は意識を手放してしまった。
──…
あのゴムは私のなんだってば!
広瀬からもらった物なの!
宝物なの!!
「返してッ!!!」
「…奈絃」
「…ぇ……?」
「奈絃、俺のこと、分かるか?」
「ぁ…広瀬………?」
そう呟いた私にすごく優しく微笑んだ広瀬。
滅多に見せない顔にビックリした。
私…眠ってたの?
部屋を見渡すと病室の中にいた。
「ほら…ちゃんと持っとけ、ったく…。」
ぎゅっと握られた手の中に金属の感触がした。
「あ…」
「…………。」
広瀬は片手を頭の後ろにやり黙り込んでいる。
自分の掌を見なくても分かる。
「………。」
私は黙ったまま宝物を両手で胸元に持っていき、少し泣いてしまった。
「その…悪かった。あんな態度とったりして…」
「ううん…私も…ちゃんと言えなかっ、た…から…」
「ノエルにも怒っといたから。」
そう言いながら寝ている私の頭を撫でる広瀬。
「ノ…エル?」
「おい、突っ立ってないで入ってこい。」
広瀬がドアを見ずに言った。