君桜
「…もー、頼むから…、葉奈。おいで」
あたしがあまりにも逃げ回るものだから、学さんはとうとうソファに座りこんでしまった。
…しっかりと薬を持って。
「熱上がるじゃん。今度は入院だぞ。薬なんか洒落になんねぇほど飲まされるぞ。点滴ぶっ刺されるぞ」
う~…
気持ちが傾く。
入院、は…嫌だし…、薬いっぱい飲まされるのも嫌だし…、点滴痛いから嫌だし…。
「葉奈、おいで」
さっきとは違って、ハッキリとした声であたしに向かって言った。
そ、そんなこと言われても…いくら学さんでも嫌だ!!
薬持ってそんな目でこっち見ないでよ。
歩く凶器だよ――!!
「…だってぇ、くす、り…ケホッ」
「ほら、言わんこっちゃない。熱上がってきてんだよ。頼むから薬飲んで大人しく寝ろ」
アレ、コレは本気でヤバ…。
あたしはその場にしゃがみこむ。
「…っ、葉奈」
頭痛い。
完璧に熱上がっちゃったよ~…。
あたしの額に学さんの少しひんやりとした掌が当てられる。
それがとても心地よくて、安心する。
学さんは、他の女の人…、昔の彼女とかにもこんな態度を取ったのだろうか。
優しくて、温かくて、安心できる、そんな雰囲気で接したのだろうか。
……な、なんか……
今、胸がギュってなった。
何だろ、この気持ち………。