君桜
「…葉奈」
「ん?」
「帰りたいか?」
「…え?」
突然出てきた、‘‘帰る’’の言葉。
帰りたくない。
でも、
「帰りたくない」と言えば、言ってしまえば…学さんに迷惑がかかるのではないだろうか…。
心の中は、「帰りたくない」と「迷惑」の言葉がグルグル回る。
…苦しい。
…苦しい。
胸がぎゅっと締め付けられる。
アイツが探しているかもしれない。
見つかれば、殺されてしまう。
見つかれば、逃げなければいけない。
…いっその事、この街から消えようか。
そしたらアイツが追っかけてくることも、アイツから逃げることも、
学さんに出会うことも
なかったのに。