君桜
「チワーッス、学さん!」
「お久しぶりっす、学さん!」
「学さん、おはようございますッ!」
何事…。
学さんと一緒に街に出ると、見ず知らずの怖いお兄さんたちが学さんに向かって頭を下げて通り過ぎていく。
学さんは何も言わずにただ堂々と歩いているだけ。
自然とできる、道。
さっきから人の波に押され、転びそうになるたび、学さんが腕を引っ張ってくれている。
…申し訳ないっす、学さん。
「…昨日」
「え?」
学さんの顔を見る。
昨日?
「…あの男、お前の父親かって聞いた奴」
――ドクンっ!
心臓が必要以上に仕事をする。
血液を体じゅうに送り出す。
とても、苦しい。