[百合]円還恋心
そんな馬鹿な。
ボクは出た時、ちゃんと閉めたはず。
なら。
彼女が自分でここを出た?
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
あの扉は、彼女にとっては重いはず。
なのに、どうして開けることができた?
わからない、理解不能、状況不明。
ボクは皿を放り捨て、長い廊下を蹴り出した。
この先にあるのは、玄関と庭。
ボクは彼女が外に出てないことを祈って、足を動かす。
さっきまで、とても幸せだったのに。
どうして今はこんなに苦しいのか。
「…………みつけた!」
見覚えのあるワンピースの裾。
ボクは彼女の元まで駆け寄った。
「……………………っ!」
ボクと彼女は両方、息を呑んだ。