[百合]円還恋心



そんな馬鹿な。


ボクは出た時、ちゃんと閉めたはず。




なら。



彼女が自分でここを出た?





嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。


あの扉は、彼女にとっては重いはず。


なのに、どうして開けることができた?



わからない、理解不能、状況不明。



ボクは皿を放り捨て、長い廊下を蹴り出した。



この先にあるのは、玄関と庭。



ボクは彼女が外に出てないことを祈って、足を動かす。



さっきまで、とても幸せだったのに。


どうして今はこんなに苦しいのか。




「…………みつけた!」



見覚えのあるワンピースの裾。


ボクは彼女の元まで駆け寄った。




「……………………っ!」



ボクと彼女は両方、息を呑んだ。
< 12 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop