冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 カイトの好みの方がうるさそうに思えて。

 それに合わせてもらうのもすごく心苦しいし、何より、いまメイはお金を持っていないのだ。

 服などの残りがもう少しはあるが、それは部屋に置いてきた。

 ということは、どう考えてもカイトが食事の代金を支払うということである。

 出た結論は――できるだけカイトの負担にならない、リーズナブルな店、というものだった。

「あっ、あの…!」

 メイは、ぱっと顔をカイトの方に向けて、その気持ちを伝えようとした。

 そんな彼の向こう側の方に、派手な大きな看板が見える。

「あ、そこがいいです!」

 メイは、慌ててそれを指さした。

 カイトの視線が、ちらっとその指の先を見やる。

 庶民の憩いの広場、ファミリーレストランだ。

 ここなら、高い料理といってもタカがしれているだろう。

 彼女も少しは心が安まるというものだ。

 しかし。

 車は止まらなかった。
 ブレーキすら踏まれなかった。

 最初から、そんな店はそこに存在していなかったかのように、カイトに無視されたのである。

 え、ええー…何で?

 何がいいかと言われたから答えたのに。

 うまく伝わらなかったのだろうかと、不安な目で彼を見る。

「もういい…黙って座ってろ」

 ムスッとした声が、彼女の要望を簡単に却下してしまったことを伝えたのだった。
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