冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 カイトだって入らないワケではない。

 しかし、それを選択する時は、何でもいい、という時だ。

 とりあえず座れて、とにかく腹に詰め込めればいい。
 そんな風情のない感情の時なのだ。

 もう一つ考えられそうなことは、値段くらいか。

 いずれにせよ、その選択に喜ぶことなど一つもなかった。

 頭の中で検索をかける。

 カイトだって、うまい店とかいうのをたくさん知っているワケではない。

 大学時代は、そういう店にも入り浸っていたが、最近は心の余裕とか潤いはなかった。本当に、何でもよかったのだ。

 しかし、頭の中に検索をかけてもロクな店が出てこない。

 日頃の食生活のすさみを物語っていた。

 最近の行きつけは。

 いや、好きで行きつけているワケではない。

 ある取引先が、毎回同じところを接待に使うのだ。
 おかげで、顔をしっかり覚えられていた。

 あそこなら。

 カイトは思った。

 あそこに連れて行けば、もう二度とメイがファミレスを指したりしないような気がした。

 カイトは、ハンドルを切った。
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