冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「あの…ここは…」
不安そうな茶色の目だった。
ようやく自分を取り戻し始めたのか、落ち着かない素振りが生まれ出す。
心配という色の眉で、じっとカイトを見つめるのだ。
んな顔すんな!
たかが料亭に、女一人連れてきたくらいで吹き飛ぶ懐ではない。
それは、メイだって知っているはずだし、もっと知ってもいいくらいだった。
もっと知らしめるために、連れて来たと言っても過言ではないのだ。
「別に大したとこじゃねー」
カイトはうそぶいた。
こんな不安な目をさせたままのメイが、見たいワケではなかったのだ。
勝手に連れて来ておきながら、もうちょっといつもの顔をしろ、とカイトは至極乱暴なことを思うのだった。
「でも…」
彼のセリフも気持ちも、全然伝わっていないようである。
それがまた、腹立たしく思えた。
「黙ってろ」
だから―― そんな言葉を言ってしまった。
これ以上、胸を騒がされたくなかったのだ。
彼が選んで、彼が連れてきた店なのだ。
黙って出てくる料理を食え、と思ったのである。
そうしたら。
メイは、本当に黙り込んでしまった。
不安そうな目の色だけは隠しきれずに、あちこちを向いては、最終的にカイトに帰ってくる。
苦い沈黙になってしまった。
いつもの彼女の作る食卓では、こんな苦い沈黙にはならない。
確かに静かだけれども、もっと違う空気だった。
メイは、くるくるとあちこちを駆け回って。
カイトの目の前に、温かい湯気の上がる料理を出す。
彼の方のセッティングが終わると、慌てたように自分の席に戻るのだ。
それが、食事開始の合図。
いつの間にか。
そんな流れが、カイトの中にくっきりと残っていた。
「あの…ここは…」
不安そうな茶色の目だった。
ようやく自分を取り戻し始めたのか、落ち着かない素振りが生まれ出す。
心配という色の眉で、じっとカイトを見つめるのだ。
んな顔すんな!
たかが料亭に、女一人連れてきたくらいで吹き飛ぶ懐ではない。
それは、メイだって知っているはずだし、もっと知ってもいいくらいだった。
もっと知らしめるために、連れて来たと言っても過言ではないのだ。
「別に大したとこじゃねー」
カイトはうそぶいた。
こんな不安な目をさせたままのメイが、見たいワケではなかったのだ。
勝手に連れて来ておきながら、もうちょっといつもの顔をしろ、とカイトは至極乱暴なことを思うのだった。
「でも…」
彼のセリフも気持ちも、全然伝わっていないようである。
それがまた、腹立たしく思えた。
「黙ってろ」
だから―― そんな言葉を言ってしまった。
これ以上、胸を騒がされたくなかったのだ。
彼が選んで、彼が連れてきた店なのだ。
黙って出てくる料理を食え、と思ったのである。
そうしたら。
メイは、本当に黙り込んでしまった。
不安そうな目の色だけは隠しきれずに、あちこちを向いては、最終的にカイトに帰ってくる。
苦い沈黙になってしまった。
いつもの彼女の作る食卓では、こんな苦い沈黙にはならない。
確かに静かだけれども、もっと違う空気だった。
メイは、くるくるとあちこちを駆け回って。
カイトの目の前に、温かい湯気の上がる料理を出す。
彼の方のセッティングが終わると、慌てたように自分の席に戻るのだ。
それが、食事開始の合図。
いつの間にか。
そんな流れが、カイトの中にくっきりと残っていた。