冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
胸にぶら下がっているものを引っ張る。
ネクタイだ。
しかし、さっきまでと何よりも違うものだった。
そのまま手を上げる、その喉元。
結び目に触れた。
いつも、自分でイヤイヤ締めるより、シュウに無理矢理締められるよりも、もっと細い結び目。
もっと苦しくない締め方。
まだ、そこに彼女の手の感触が残っているような気がした。
んなコトするために、わざわざ。
カイトのネクタイを結ぶために、わざわざあの格好のまま、部屋を飛び出してきたのである。
階段で止まっていなければ、きっと彼女はカイトを捕まえることは出来なかっただろう。
彼は、とても短気なのだから。
「カイト」
誰よりも今、カイトを捕まえたがっている男は、階下にいた。
階段の登り口の側まで来ているのが、声の届き具合で分かる。
「るせぇ! だぁってろ!」
邪魔すんな!
カイトはまた怒鳴り返した。振り返りもせずに。
邪魔……すんじゃねぇ。
結び目に触る。
昨夜から暴れていた感情は、まだ彼の中にある。
あのメイという女に向かうと、自分がおかしくなるような気がした。
けれども。
この結び目に触っていると、何か分かるような気がしたのだ。
彼は、見逃した鳩を見るために、もう一時間待ったりする性格ではないのだ。
機械をいじるのは得意だ。
バラせるなら、すぐにでもドライバーで家をへっぱがして、鳩を引きずり出すだろう。
しかし。
心の中の鳩時計をバラしたことはなかった。
しかも、中の鳩は――彼が、いままでに見たこともないチョコレート色の鳩。
胸にぶら下がっているものを引っ張る。
ネクタイだ。
しかし、さっきまでと何よりも違うものだった。
そのまま手を上げる、その喉元。
結び目に触れた。
いつも、自分でイヤイヤ締めるより、シュウに無理矢理締められるよりも、もっと細い結び目。
もっと苦しくない締め方。
まだ、そこに彼女の手の感触が残っているような気がした。
んなコトするために、わざわざ。
カイトのネクタイを結ぶために、わざわざあの格好のまま、部屋を飛び出してきたのである。
階段で止まっていなければ、きっと彼女はカイトを捕まえることは出来なかっただろう。
彼は、とても短気なのだから。
「カイト」
誰よりも今、カイトを捕まえたがっている男は、階下にいた。
階段の登り口の側まで来ているのが、声の届き具合で分かる。
「るせぇ! だぁってろ!」
邪魔すんな!
カイトはまた怒鳴り返した。振り返りもせずに。
邪魔……すんじゃねぇ。
結び目に触る。
昨夜から暴れていた感情は、まだ彼の中にある。
あのメイという女に向かうと、自分がおかしくなるような気がした。
けれども。
この結び目に触っていると、何か分かるような気がしたのだ。
彼は、見逃した鳩を見るために、もう一時間待ったりする性格ではないのだ。
機械をいじるのは得意だ。
バラせるなら、すぐにでもドライバーで家をへっぱがして、鳩を引きずり出すだろう。
しかし。
心の中の鳩時計をバラしたことはなかった。
しかも、中の鳩は――彼が、いままでに見たこともないチョコレート色の鳩。