冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「カイト…」
もう待てませんよ。
彼の不興を買おうが何だろうが、職務を遂行する律儀な彼の相棒は、ついに階段を登ってきた。
ドライバーを持ったままの彼は、フタが開く気配のない鳩時計を睨むしか出来ないのである。
クソッ!
分解するには、いまは本当に時間がなかった。
がっと、カイトは前に向き直り、階段を駆け下り始めた。
すぐにシュウと出会うことが出来る。
今日は、一段と忌々しい顔に見えた。
「何をしていたんで……」
階段の途中で言葉を続けようとする彼を無視して、横をすれ違うように降りていく。
シュウも続いて降り始めた。
「珍しいですね、そんなに綺麗にネクタイを締めているなんて」
玄関口のところでそう言われて、ムッとした。
見んじゃねぇ!
不可能なことを内心で怒鳴りながら、彼は玄関を強く開けた。
室内よりも、もっと冷たい空気が頬を叩く。
このネクタイの結び目を、誰にも見られたくなかった。
そんなことは、不可能だ。
ネクタイの結び目は、人に見せるためにある。
それ以外では、ただ無駄な長いヒモなのだ。
けれど。
見られずに済む方法があった。
シュウが後ろにいるうちに――カイトは、ネクタイを解いてしまった。
指が。
少し震えた。
「カイト…」
もう待てませんよ。
彼の不興を買おうが何だろうが、職務を遂行する律儀な彼の相棒は、ついに階段を登ってきた。
ドライバーを持ったままの彼は、フタが開く気配のない鳩時計を睨むしか出来ないのである。
クソッ!
分解するには、いまは本当に時間がなかった。
がっと、カイトは前に向き直り、階段を駆け下り始めた。
すぐにシュウと出会うことが出来る。
今日は、一段と忌々しい顔に見えた。
「何をしていたんで……」
階段の途中で言葉を続けようとする彼を無視して、横をすれ違うように降りていく。
シュウも続いて降り始めた。
「珍しいですね、そんなに綺麗にネクタイを締めているなんて」
玄関口のところでそう言われて、ムッとした。
見んじゃねぇ!
不可能なことを内心で怒鳴りながら、彼は玄関を強く開けた。
室内よりも、もっと冷たい空気が頬を叩く。
このネクタイの結び目を、誰にも見られたくなかった。
そんなことは、不可能だ。
ネクタイの結び目は、人に見せるためにある。
それ以外では、ただ無駄な長いヒモなのだ。
けれど。
見られずに済む方法があった。
シュウが後ろにいるうちに――カイトは、ネクタイを解いてしまった。
指が。
少し震えた。