牙龍 私を助けた不良 上



少女は、左手の薬指で輝くリングに視線を落とす。眠り続けていた自分を、待ち続けてくれた恋人に貰ったものだ。


そして、左手首にあるブレスレットを見つめる。大切な片割れの姉から貰ったものだ。


少女──桃華が会いたい人に、大切な人が止めているから会えない。


悲しい、というよりは、どうして駄目なのかという思いが強い。



「・・・分かりました」


「ごめんなさいね──あ、そうそう。今日ね、桃華ちゃんに会いたいって人が来るって、彼氏さんが言ってたのよ」


「私に、会いたい人・・・?」



桃華は首を傾げながら、部屋から出て行く看護師の背中を見送る。


片割れである姉に、会いたい人は沢山いると思うが、自分に会いたい人なんて思い付かない。



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