嘘カノ生活
「…は?」
振り向くとそこには、明らかな不良が片足重心で立っていた。
髪の毛はどこぞのゲームキャラかと思うほど固められている。
「ヒマでしょー?お友達も今いるんだったら一緒にどっか行こうよー」
「えーと、連れはいますけど…」
「じゃあ良いじゃん!行こうよー」
「でも、これからバイトあるんで」
「1日くらい休むとかさー」
ああ、苛々する。
しつこい。
いちいち語尾を延ばす必要がどこにあるんだろうか。
「あたしそんな軽くないですから!」
苛々が絶頂に達してしまったので、思わず口から出た言葉。
それが気に食わなかったのかその不良は怒った様に、至近距離まで近づいてきた。
その反動で後ろに下がったけど、それも虚しくすぐに追いやられた。
「元気だねー」
男は右手であたしのあごをクイっと持ち上げた。
「よく見りゃすげーかわいいしー?」
口角を上げて笑う男の顔が近づいてくる。
ゲーセンは混んでいて、こんな隅に追いやられたあたし達を誰も気にしない。
「こういうの嫌いじゃないんだよな」
「ちょっと…やめてください」
顔をそむけたけど、あたしのあごにはこいつの手。
動けない。