前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
ギャンギャンと喚かれてしまったものだから、俺は足を止めなければならなくなる。
仕方がなしに振り返れば、ぶすくれながらズンズンと俺に歩んで来る彼女の姿。
だけどなんだか決まり悪そうに、「男は滅んでもいいが」君は駄目だぞ、さっきのは嘘だと弁解を頂戴した。
そうっすか、そうっすか…、あー…、こういっちゃあれっすけど、スッゲェめんどくさいっすよ。御堂先輩。
先輩の押し付けてきたケータイ小説本でいうあれみたいっす。ツンデレさんみたいっす。
あんたなんか興味ないわよツンツンしつつ、内心は貴方のこと好きなのよデレデレ、みたいな?
俺、昨晩、ツンデレ少女と俺様不良くんの小説を読んだから(半強制的に読まされてるともいう)、結構知識はある方っすよ。ツンデレのこと。
小説の中じゃどうも思わなかったけど、リアルにツンデレさんがいたらめんどくさいこと極まりないな。
……あれ、そしたら、御堂先輩…、俺に気があるみたいじゃ。
ははっ、まさかな。そんなオッソロシイこと、あるわけないよな。
普通貧乏くんの俺を好きって言ってくれるの、鈴理先輩くらいだし。
自意識過剰なことを思うのは乙だぞ、俺。
肩を並べてくる御堂先輩は歩調を速めて、俺の前に回ると帰り道を通せん坊。不機嫌に見据えてくる。
もしかして財閥界で噂立ったことについて、文句でも言いに来たんだろうか。
宇津木先輩がこっそり教えてくれたけど、財閥内で超噂になってるみたいなんだ。俺と御堂先輩のこと。
特に御堂先輩は男嫌いだから、会場で男を襲った言動には誰もが衝撃を受けたらしいし。
俺もいい迷惑を被ったんだけど、一般人だから然程支障はなかった。
でも彼女は財閥の令嬢だからなぁ。
ある程度の理不尽な罵詈讒謗(ばりざんぼう)は覚悟すべきだと軽く吐息をついた、刹那、鼻先に何かを突きつけられる。
至近距離過ぎてアングルが合わない。
確かめる前にそれを受け取った俺は、正体が長方形の箱だと気付き、目を白黒。
チラッと相手を見やると、開けてみろとばかりに向こうで腕を組む御堂先輩の姿。