前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「それに君は高いところが嫌いなのだろう?」
上る途中で立ち止まった御堂先輩は、今度こそ体ごと振り返って俺にクエッション。
「だから僕は君の手を取るんだ。恐怖にまみれた顔など、僕は見たくないものでね」
柔和に綻ぶプリンセスは歩みを再開する。
呆けている俺はイケた台詞に胸きゅん、するわけもなく、脳裏に我が彼女の姿がちらついてドッと冷汗。
脳内の攻め女がシニカルに笑って、
『また鳴かされたいんだな』
いいぞ、大歓迎だと指の関節を鳴らしている。
ブルッと身震いしつつ、俺は疑念を抱く。
なんで、プリンセスに少女漫画チックな台詞を向けられてるんだろう、と。
まさか本当に俺に気があるわけじゃないよな。
自惚れたくないけど、男嫌いの彼女がこんな台詞を向けてくるって…、嗚呼、ツッコミたいところ。
だけど、指摘して三日前のようにパニくられても困る。
何も聞かなかったことにしよう。
奇妙奇怪なエスコートも終わり、階段を上り切った俺は、キレイサッパリ今のやり取りを忘れるために家の鍵を開けてお客を部屋に招き入れる。
あ、やっべ。玄関が散らかってやんの。
アポなしだからしょうがないとしても、せめて散らばったサンダルやスニーカーを寄せて、お客さんが通りやすいように…っ!!
上体を起こして直立する俺はギギギッ、振り返って相手を凝視。
ツーンと背を向けている御堂先輩は腕を組んで、その場を凌ごうとしてるけどそうは問屋が卸しませんよ。
「い、今…触りましたよね…、俺の腰」
途端に開き直った御堂先輩はべつにいいだろうと、何故だか逆ギレ。
女じゃあるまいし、何度触ったって減るもんじゃないだろう!
とかなんとかほざきますけど、減りますっ、俺のHPが減ります!
主に仕置きの面でHPがっ…! ばれた時が怖いんっすからね!
「やめて下さいよ!」
俺、貴方のせいで彼女に怒られたんですからっ、絶対に腰は触らないでくれと懇願。