前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


ぶすくれている御堂先輩は、鈴理には自由に触らせているではないかと鼻を鳴らしてきたけど、そりゃあ彼女だから許してるんっすよ。

彼女であっても逆セクハラに対しては物申している部分、たっくさんあるんっす。ましてや二度目ましての方に腰を触られるのは、ちょ、大勘弁!

仕置きとかもっと大勘弁だっつーの!

 
今度触ったらガチ怒りますからね、念を押して約束を取り付ける。

完全にヘソを曲げた面持ちを作る御堂先輩は、「君が誘ったんだ」僕は悪くないぞ、なーんて身勝手なことをのたまって責を俺に押し付けてくる。


こんのジコチュープリンセスはッ…、いつ・どこで・誰が・どのような状況で貴方様を誘いましたか。

煮えるような感情を噛み締めていると、「ほらまた誘う」ワケの分からないことを言われた上に、腰に腕を回されてグイッと引かれた。

向こうは手馴れた手つき、俺も慣れた光景、ではあるけど全然嬉しくないっ…!

お相手が鈴理先輩ならまだしも、他者の女性にされるとか論外!



狭い玄関で何してくれるんっすか!



「わ、悪ふざけはやめて下さいって」
 
   

同じくらいの背丈だから視線も合わせやすい。

軽く両手を上げて、悪ふざけをしてもお互いになんの利得もない。
寧ろ損害が出るだけだと主張。

なによりも俺は男、貴方様の嫌いな男、こうしているだけでも嫌悪でしょ。キショイでしょ。至近距離なんて最悪でしょ。バリバリの野郎っすよ、俺!


ぺらぺらと矢継ぎ早に喋って主張、某王女は軽く瞼を下ろして長い睫毛を微動。

ゆっくり持ち上げた瞼から覗く硝子玉のような瞳が俺を捉えた。


肩を掴んで押し返そうとする俺の手を取り、指を絡めて、御堂先輩は頬を崩す。
 
 
「悪ふざけでなければやめなくてもいいのかい?」
 
「はいっ? ちょ、なんっすか、その小学生並みのお言葉は! 人の足を掬うような発言はやめてくだぁああ?!」
 
 
体が宙に浮いた。
そうか俺もついに武空術を手に入れたのか。お空も自由自在に飛べるようになっちゃったんだな!

だったらお次は気円斬を取得できるよう修行しないとな!

じゃなくって…、おい嘘だろっ、なんでこんなっ。

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