前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
萎縮している親衛隊がお互いにアイコンタクトを取って、小声で俺の名前を紡ぐ。
バシンッ―ッ、「声が小さい」舐めてるのかと御堂先輩が満面の笑顔を作ってベルト鞭を張らせる。
青褪めながら、さっきよりも大きな声音で俺の名前を紡ぐ親衛隊。
まだ声が小さいと一喝する御堂先輩。
すると教室を満たすくらいの声音で御堂財閥の運命を背負った花嫁の名前を斉唱。
異様な光景に俺達は唖然の呆然。
余所で御堂先輩は宜しいと頷き、話を続ける。
「お前等は罪を犯した」
御堂財閥の花嫁を襲おうとしたのだから、それなりの贖罪はしてもらわなければ。
だから罰を受けるとは別に、自分に償いを見せろ。でなければ半殺し決定だ。
まあ、鞭の刑は決定事項だが。
ゴホンと咳払いを一つする御堂先輩は、ブンッとベルトを靡かせて親衛隊隊長の柳先輩を指差し、ニッコリ。
「お前、今日から団長に任命する。以後、責任を持って僕と豊福の仲を援護しろ。いいか?」
「え゛…。で、ですが我々は鈴理くんの親衛隊でして」
「ですがも何もクソもあるか。大事なフィアンセを襲おうとしたんだ。その分、しっかり体を張って豊福を守ってもらう。いいか、これはお前等にとっても悪い条件ではない筈だぞ。
なにせ、僕が彼を娶(めと)れば、君たちのアイドルは純粋にアイドルとして戻ってくるのだから」
ボソリと呟く御堂先輩は異存なんてないだろ、とプリンセススマイル。反論は受け付けないと顔に堂々と書いてある。
柳先輩は他の親衛隊に目を向けた。アイコンタクトを返す親衛隊の皆さんは、うんっと頷いた。
で、はい、一斉に拍手。
「婚約おめでとうございます」「頑張って下さい」「立派な世継ぎを生んで下さい」
完全に御堂先輩に味方して声援を送っている。
な、なんて人だ…、あの親衛隊をやり込めるなんて…、完全に丸め込まれたよ。
「ちょろい」結った髪を靡かせる御堂先輩は、呆気に取られている鈴理先輩に対して不敵に一笑。