前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「狙った獲物を手に入れるには、まず周りから固めなければな? ツメが甘いぞ、鈴理」
つ、強ぇ…あの人。
完全無欠だろ?!
あの鈴理先輩を上回る頭脳派というかなんというか。やることがえげつねぇ。
「くそ。侮っていた」
親指の爪を齧る鈴理先輩にふふんと鼻を鳴らし、
「僕は本気だと言っただろ?」
本気になったからにはやることは徹底的にする。
グッと握り拳を作って高らかに宣言。
そう、後れを取っている分、何事も徹底的にしなければならないのだと御堂先輩は何処からともなく手帳を取り出して俺達にどどーんと見せ付けてくる。
「僕は婚約者のために、彼の行動を事細かに記録し始めたんだ。例えば…、そうだな。昨日の豊福の起床刻は6時、身支度朝食等々済ませて45分に家を発つ」
ちなみに朝食メニューはおにぎり(梅干入り)一個と、熱い茶。もう少し食べなければいけないと思うぞ、豊福。
えーっとそれから家を発った途中、自販機下に十円玉を見つけて大喜びするものの交番に届けるべきか思い悩む。
だがつい癖なのか、自販機の小銭口におつりの忘れがないかどうか調べてしまう。
なるほど、庶民らしい可愛げのある癖だな。
結局十円玉は有り難く頂き、上機嫌で学校に登校。
そこで鈴理と会い……、……、此処は端折る。
僕としては面白くない内容だからな。
さてと、その日、豊福が受けた授業科目だが。
一時限目は英語、二時限目は数Aで三時限は(中略)、各々受けた授業内容は(中略)、授業間の休み時間はこんなことをして(中略)、昼休みを迎える。
「昼休みの行動だが、まず大雅と鉢合わせになり共に学食堂へ」
「ちょ、ちょちょちょぉおおおお! 御堂先輩っ、完璧過ぎる行動把握が怖いっす! すべて事実だからこそ怖いっす!
どっから俺の行動を見ていたんっすかっ。俺の家の朝食まで把握っ、うわぁあああ十円玉のところも知ってくれちゃってっ、恥ずかしさのあまりに死ねそうっすよ俺!」
というか、そこまで事細かに記録するなんてっ。
羞恥と恐怖でわなわなと震える俺に、御堂先輩は女子が黄色い悲鳴を上げるような満面の笑顔でこうのたまった。