前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
まあ、今は悶々悩んでも仕方がないんだけどさ。
今すぐに結婚するわけでもないし。
カラン、突然中身の入った湯飲みがテーブル上で転げた。
「あっち!」「玲、あんた!」湯飲みを倒してしまったのは御堂先輩、お茶が制服に掛かっている。
鈴理先輩にまで被害が及んだようで、彼女のブレザーにもお茶が掛かっていた。
大丈夫かと声を掛ける前に、手洗いで汚れを落としてくると御堂先輩が席を立った。
倣って席を立つ鈴理先輩も手洗いで汚れを落とすと告げ、最悪だとブツクサ御堂先輩に文句を飛ばしていた。
揃って手洗い場に向かう二人に俺は心配の念を抱く。
大丈夫かな、火傷とかしてないといいけど。
「…今の、わざとじゃ」
「え?」俺は独り言を零すエビくんに驚いて、思わず凝視。アジくんもまさか、と凝視している。
当の本人はちょっと間を置き、眼鏡のブリッジを押して気のせいかもね、と曖昧に笑みを浮かべた。
きっと気のせいだ、繰り返すエビくんに俺達は顔を見合わせる。
ちゃんと事故現場を見ていなかったから強くは言えないけど、少なくとも俺の目にはわざとには見えなかった。
見えなかったよ。