前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
ズズッと茶を啜る先輩のM&A経済講座に俺はなるほど、と相槌を打った。
本当に詳しいんだな、感心する。
どうしてそんなに詳しいのか聞けば、「一応財閥の令嬢だからな」勉強させられるのだと先輩は微苦笑を零した。
高校生からもう経済の勉強をさせられるんっすね。令嬢も大変だな。
俺も冷めてしまった茶を啜り、ポテチを口に入れて咀嚼。
次いで、
「さっき二階堂財閥って口ずさんでいましたけどあれは?」
素朴な質問を相手にぶつける。
「二階堂財閥の提携企業とかなんとか…、大雅先輩のいる財閥っすよね?」
「ああ。長期に渡っている日本の不景気は財閥界でも戦慄が走っている。財閥の中には破綻して名が消えてしまったところもある。
後世まで存続するよう常に財閥界は動いているんだ。二階堂財閥も存続を懸けて今回のM&Aに一役買っているようだ」
財閥界も大変なんだな。もっと楽だと思っていたけど。
しかめっ面を作っている鈴理先輩を見つめていた俺はふと気付いてしまう。
二階堂財閥のM&Aって、間接的に先輩のいる財閥に関わっているんじゃ。
だって大雅先輩と鈴理先輩は公の場では許婚って関係だし。
関係ないってことはないだろう。
その証拠に先輩の表情が若干硬い。
庶民の俺じゃ知れないところで、先輩は財閥について真剣に考えているのかも。
パリッ―。
ポテチを噛み砕いていた俺は話題を変えるべきかどうか悩んだ。
此処は深く財閥のことについて聞いておくべきかな。
でも部外者だし、根掘り葉掘り聞くのも如何なものだろう? うんぬん考えていると、ジトーッと先輩が俺を見つめてきた。
視線を受信したはいいけどアイコンタクトの意味が分からず、俺もジトーッと見つめ返す。
数秒見つめあった後、心意が受信できなかった俺はどうしたのかと相手に尋ねた。
先輩はまじまじと俺を見つめてそっと口を開く。
「そういえば空は着替えていないが、着替えなくて良いのか? 制服のままでは下ごしらえするのに大変じゃないか?」
あ、そういえば俺、まだ制服だ。
上はカッターシャツで下はスラックスのまま…って、その期待した眼はなんっすか!
アータの前じゃ着替えませんよ!
そんな命知らずなことしませんからっ!
さっきみたいにちゅーされたり、お触りされたり、挙句の果てにはな、鳴かされ、鳴かされ…、なかされ。
嗚呼、思い出すだけで惨めな気持ちになる。