前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
消沈する俺を余所に、「着替えないのか?」下心ありありの台詞を俺にぶつけてくる。
話題を逸らすために俺は茶を飲み干してしまうと、残りわずかなポテチを先輩と半分こにして完食。腰を上げて流し台に逃げた。
「なーあ」しつこい肉食お嬢様に、溜息をついて俺は話題を夕飯に持っていった。
彼女の名を呼んで、俺は冷蔵庫から懸賞で当たった牛肉を先輩に見せてあげることに。
話題を逸らされたことにぶーっと脹れながら、先輩は俺の持っている箱を覗き込んでくる。
ビシッと固まる先輩に気付かず、「凄いでしょ!」お肉めっちゃ詰まってるんですよ! 俺は大興奮して熱弁。
「父さん母さんとはしゃいじゃって。懸賞品って豪勢っすよね。先輩が食べている肉よりか劣っているとは思うんっすけど、精一杯ご馳走しますっす!」
「(目分からして肉…、五切れ程度しか入っていないように見えるのだが。しかも肉厚が薄い!)これは楽しみだな」
「俺の家、すき焼きって肉が殆ど入ってないんっすよ。水菜と白菜がメインというか。豆腐がどどーんと真ん中に占めている時もあると言いますか。
だから今日はご馳走なんっす! 勿論、お客さんの先輩には沢山肉を振舞うっすよ!」
楽しみにしていて下さいね。
笑顔を作る俺に、何故か涙ぐむ鈴理先輩(単純計算すると肉が食べられる数は一人一枚。客人のあたしは二枚食べる計算か?!)。
あれ、どうしたんっすか。
肉いっぱいじゃないっすか。
もしかして先輩の思う肉じゃなくてがっかりされた?
いやいや庶民の食べる肉なんてたがか知れていると思うんだけど。