前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



鈴理が事の騒動を知ったのは彼氏の泊まりから帰宅して直後、夕暮れの刻のことだった。


久しぶりに有意義な時間を過ごせたため、文字通り鈴理はご機嫌もご機嫌。機嫌のベクトルは天を向いていた。

軽やかな足取りで自室に戻り、荷物を机上に置くとベッドに腰掛けて泊まり会の一夜を思い出す。

携帯を片手に思い出していたのだが、それはそれは楽しい一日だった。


相変わらず彼氏は初々しいし、キスをすればするほど溺れてくるし、触り心地も最高で以下省略。


両思いになったことでその行為に拍車が掛かってくる。

いずれは彼氏を食らうのだと意気込んでしまうのは、仕方のない欲情なのだろう。


弾んだ気持ちを抱えて携帯を弄った。


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チェックするために十字キーに指を掛けていると、突然携帯が声を上げた。

着信だ。
相手は誰だろうか。

ディスプレイを覗き込む。表記は『二階堂大雅』だった。


よっぽどのことがない限り連絡を取り合わないため、許婚からの連絡に鈴理は目を剥いた。


ボタンを押して電話に出る。此方が何かを言う前に、


『鈴理。まじどうする?!』


珍しく焦った許婚の声が鼓膜を振動した。

喧嘩ばかりしているが、許婚とは悪友である。何かあったのかと相手を宥めながら用件を尋ねる。

すると何を言っているのだと大雅は頓狂な声を出した。

が、鈴理の落ち着きっぷりを察して、お前はまだ知らないんだな、と苦言を漏らした。妙な胸騒ぎを感じてしまう。


「どうしたんだ?」


大雅に繰り返し聞くと、彼は重々しい口調でのたまった。
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