前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
『親父達が婚約式の日程を決めるって言いやがった』
婚約式…、誰と、誰の?
急激に口腔が渇いていくのを感じながら、敢えて相手に尋ねる。
大雅は間を置かずに名を紡いだ。
自分と鈴理の名を。
目の前が真っ白になりそうだった。
自分達の婚約式を決める? 両親が? そんなこと一言も聞いていないのに?
動揺を露にする鈴理に、自分も今さっき聞いたのだと大雅は吐息をつく。
自室にいた自分に親が前触れもなく告げてきた、大雅は声のトーンを落とす。
近々両親は許婚から婚約者にさせるつもりなのだ。
きっと契機はニュースでも取り上げられた二階堂財閥のM&Aだと思う。
大雅は舌を鳴らした。
『不景気で財閥界も荒れているからな。
財閥同士の“共食い”も目立ち始めているらしい。だから繋がりを強化したいんだろう。俺達を使って』
「まったくもって不愉快だっ。
本人達の意思関係なくっ、婚約式の日程を決める? 馬鹿も休み休み言え!」
『俺に当たるなって。
俺だってショックだったんだからな。別に俺はテメェのことが嫌いじゃねえ。けど恋愛対象外だ。お前もそうだろ?
両親も分かっていると思っていたんだがっ…、まさかこんなにも早く事が運ぶなんて。先に親しい身内だけで婚約式が、後日正式な婚約式が行われるらしい。日程は未定だが、そんなに時間はねぇぞ。
お前、豊福と別れるつもりは?』
「あるわけないだろ! っ、くそ…、父さまも母さまも勝手過ぎる」
『本当にな。昔からそうだ。―――…財閥の令息令嬢なんて』