前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「んーっ」
抜け道は無さそうだ、路地裏に顔を突っ込んだ俺はすぐに身を引く。
どんっと背後に衝撃が走った。
通行人にぶつかったのだと思った俺は慌てて謝罪する。
同時に首に腕を絡められた。
ギョッと驚く俺を余所に、「駄目じゃないか」こういうところは一人で行くもんじゃないぞ、と注意される。
聞き覚えのある声に俺は視線を流して相手を確認。
そこにはにこっとスマイルを作っている御堂先輩の顔がっ、て、ぬぁああああ?!
今度こそ頓狂な声を上げて驚いてしまう。
なんで御堂先輩が此処にいるんっすか!
ほんっと神出鬼没にも程がありますよ!
驚いたと心臓を高鳴らせている俺に、
「勝手に何処かに行ったのは君だろ?」
心配したと御堂先輩が頭を小突いてくる。
ううっ、すんません、そういえば何も言わず出て行きましたね。俺。
「で、外に出るということは帰るつもりだったのかい?」
「あ…あーっとそのつもりだったんですけど、帰り道が分からなくて」
手遊びしながら現状を伝えると、「それでここらを漂っていたのか」呆れられてしまった。
め、面目ないっす。
でもコンビニを見つけて帰り道を自力で見つけようとしていたんっすよ!
そう訴えると「携帯は使えないのかい?」地図を出せばよかっただろ、と助言を頂いてしまう。
そ…、そうだった。
携帯という手があった。アナログ人間の頭じゃ思いつかなかったよ。
俺、現代っ子じゃないかもしれない!
がーんっとショックを受ける俺を余所に、「この先は何があるんだろうな」御堂先輩が路地裏を指差した。
「少し行ってみないか?」
闇が広がる路地裏に好奇心を向け、彼女は俺の腕を取った。
え、それは別にいいっすけど、先輩は俺を連れ戻しに来たんじゃないのかな?
首をひとつ傾げ、俺は先輩と一緒に路地裏に足を踏み入れる。
湿気のせいか、妙に辺りが生臭い。
ゴミは散らばっているし。
なによりも視界が悪い。何か出てもおかしくない気がする。