前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


こうして御堂家と実家を行き来する二重生活を送っていた俺だったけど、徐々に秘密はばれていくもんだなぁって実感するようになる。


例えば放課後。

途中までフライト兄弟と帰っていたら、「空さま」お迎えに上がりましたよ、と蘭子さんが前触れもなしに現れるんだ。

送り迎えはガソリン代の無駄だからしなくていいって言っているのに絶対蘭子さん達が迎えを寄越すもんだから俺は溜息しか出ない。


御堂先輩だと携帯で連絡するんだろうけど、俺は蘭子さん達の連絡先を知らないために迎えの車に乗るしかない。

折角迎えに来てもらったのに無視するなんてできないだろ?


だから俺はフライト兄弟にごめんと謝って、迎えの車に乗ることに。

そんな日が連日続いてみろ。
フライト兄弟だって俺の変化に嫌でも気付くと思う。

触れて欲しくないって思っても、フライト兄弟はある日の昼休みに聞いて来るんだ。

「迎えに来ているあの人、誰?」と。
 


「お前のことしょっちゅう迎えに来ているみたいだけど、あの人、誰? 美人だったけど……、まさか彼女じゃないよな?」



教室。

昼食を取り終わった俺は自席に着いて、新書を読み漁っていた。今読んでいる本は『マクロ経済』と呼ばれる経済の本。

「なーあ」アジくんに顔を覗き込まれてしまい、俺は読書を中断するしかない。「彼女じゃないって」変な誤解しないでよ、と俺は苦笑する。


「でもさ毎日のように迎えに来ているじゃん。しかも空さまだって…、お前、あの人と密会してるんだろ!」


アジくんに頓狂な詰問をされたために俺はとんでもないと声を上げる。


「じゃあ誰なんだよ」


ジトーッと見据えてくるアジくんに、「知り合いだよ」それ以上も以下もないと俺は言い切った。

「知り合いねぇ」

ただの知り合いが人を様付けするか?

疑心を向けてくるアジくんがエビくんを流し目にする。

「年上好みならしょうがないんじゃない?」

エビくんは大袈裟に肩を竦めた。

だから、蘭子さんは俺の彼女じゃないって!


「しかも弁当。最近豪華だし…、作ってもらってるんじゃねえの?」


ギクリ。

俺は何のことだとそ知らぬ顔で新書に目を落とす。 
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