前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
知っていますよ。そんなこと、俺様に言われなくても。
でもどうしょうもないことだってあるじゃないっすか。
今の俺に鈴理先輩をどうしてやることもできない。
同じように鈴理先輩も俺にどうしてやることもできない。
なにより鈴理先輩にはこんなにも良き理解者がいる。
俺に殺気立つほど、彼女を想う理解者が。俺の出る幕なんてひとつもない。
二人が婚約問題でモダモダしている間に、俺自身の私生活に問題が起きたことを二人は知らないでしょう?
どうすればいいか分からず、家族がバラバラになるかもしれない恐怖を噛み締めていた日々を貴方達は知る由も無い。誰も俺の苦悩を知らない。
けれど御堂先輩だけがその恐怖を、苦悩を、孤独を理解してくれていた。
自分の意思とは関係なく、婚約をしてくれた。
大嫌いなおじいさんの命令だと言うのに、惜しみなく庶民出の俺と婚約してくれたんだ。俺達家族を救ってくれたんだ。
だから、俺はその気持ちに報いたい。
例えそれが鈴理先輩を傷付ける結果になったとしても、裏切りだと罵られる行為になったとしても、誰かに恨まれたとしても、俺は御堂先輩を守りたい。守り続けていきたいんだ。
そのためならなんだってできる。今まで築き上げていた関係を壊すことだって。
「俺は御堂先輩を選びました。それに弁解する気はありません。そろそろ解放されたかったんっすよね。あたし様の束縛から。正直鬱陶しかったので」
「あンだとテメェ!」
相手の怒りを更に買ったけれど、これでいい。
忘れて欲しいんだ、俺という男を。最低男だと思ってくれたら、先輩だって後腐れなく次に進んでくれる。―――…そうでしょう? 鈴理先輩。