前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



丁度その時、点滴室の扉が開いた。

会話は中断され、三人の視線が扉に集中する。話題の渦中になっている彼である。


扉を閉め、目元を擦る彼は少し気が落ち着いたのか、鈴理と大雅に世話を掛けた謝罪と感謝を述べ、事態に駆けつけてくれた玲にも頭を下げる。


本当に心配していたのだろう。目元が赤い。


「良かったな豊福。お母さまが倒れたと聞いた時は、肝が冷えたけれど、一安心のようだね。今日は自宅でお母さまの面倒を看たいだろ? 帰宅するといいよ」


「だけど、平日は家に」


「馬鹿だな。緊急事態なんだ。僕達が帰宅を許さないわけないじゃないか。迷惑と思わず、今日は帰宅しろ」
 

彼の気はまだ動転していたようだ。
 

玲の言葉にしゃくり上げ、


「憎いっす」


どうしようもなくお金が憎い。
母さんが無茶する原因となったお金が憎い。


家庭をめちゃめちゃにしたお金が憎くてしょうがない。


崩れそうになる体を壁に張り付かせ、「畜生」彼は嗚咽を漏らした。

指先が白くなるまで壁に爪を立て、惜しみなくその負の感情をもらす。
 

「借金さえなければっ、こんなことにはならなかった。お金っ、おかねのせいでっ」


お金がないと俺達は本当の意味で幸せになることさえできない。憎い、憎くてしょうがない。
 

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