前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「鈴理がどれだけ涙を流したか、ご存知ですか?!」
婚約式の夜もあの子、控え室で大泣きしていたんですよ!
大雅さんが慰めていましたが、それはそれは見ていられないほど痛々しい姿でした。
お姉さまと私が大雅さんに呼ばれた時は、あの子、『令嬢なんてやめてしまいたい』と、『空を傷付けてしまった』と、『消えてしまいたい』と泣き崩れていましたよ!
結局あの夜は大雅さんが鈴理さんの分まで式に出席して事なく得ましたが、あの子はボロボロでした!
部屋に行っても鈴理は家族を拒絶して泣き崩れていました。
お松さんが鈴理を介抱してくれましたが、私達姉妹でさえ拒むほど、あの子は傷付いていましたよ。
瑠璃がお父様、お母様に不信感を抱いていました。
「どうして鈴ちゃんの嫌がることばかりするの?」と。
まだ幼いあの子でさえ、そう思うのですからお二方のしたことは相当酷なものですよ。
何が面目ですか!
娘の傷付く顔しか作れないのに、面目をお気にするなんて少々驕っていませんか?!
「それにお父様。お母様のせいでっ、私はっ、私はあの子と」
「真衣。落ち着きなさい。貴方の言いたいことは分かるけれど、お父様、お母様の言うことも一理あるのだから」
「いいえ。いいえっ」黙っていられません、もう我慢の限界です。
真衣が声を上擦らせる。
咲子は次女の背中を軽く擦り、気を落ち着かせると両親に苦笑を浮かべた。
「お気持ちは分かりますが」
鈴理の気持ちを無視し、強引に物事を決めてしまった末路ではないかと咲子は意見する。