前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「強くは言いませんでしたが、やはり今回の一件は鈴理にとってマイナスでした。大雅さんにしても同じ。二人は婚約など望んでいなかった。
昔から家族のように接していた二人ですからね。
結婚なんて兄弟同士でさせられているような気分なんじゃないかと思いますよ」
それにお二人は知らないでしょうけれど、私達姉妹は随分長いこと四人で“遊ぶ”ということをしておりません。
あの頃は毎日のように一緒に遊んでいたというのに、気付いたら家族評価が付きまとっていた。
お父様もお母様も、無自覚に姉妹間でランク付けを始めたんです。
鈴理は劣等感を抱き始めました。
あの子は型破りな性格をしていますからね。
少々令嬢に合わないところもあり、いつも叱られてばかり。
あの子は思ったのでしょう。
両親から期待されていない。
一握り分しか愛されていないのだと。
誘拐事件の一件で物の見方が少しは変わったようですが、劣等感は今も尚あの子の中に息を潜めている。
劣等感を抱くようになってから、鈴理は私達と一緒にいたがらなくなりました。笑わなくなりました。
能面が当たり前でした。
しっかり者ですが、誰よりも無口な子になってしまいました。
昔はわんぱくで活気ある子だったのに。
そんな彼女の笑顔を再び見るようになったのは、庶民の子との付き合いが契機です。
「鈴理にとっては生き甲斐だったんですよ。恋という魔法が。
庶民の子とのお付き合いは悪くなかったと思いますよ。私は彼のこと、とても良い子だと思っていましたし。大雅さんとも仲が良いとお聞きしました。
鈴理は嬉しかったでしょうね。自分の許婚を知っても尚、側にいてくれる人がいて」
だから簡単には諦められないんじゃないですか?
咲子が同意を求めると、英也が小さな吐息をつく。
「分かってはいたつもりなんだ」
鈴理に酷なことをした自覚はある、けれどこれは必然なことだったのだ。
何よりそうすることが鈴理の幸せだと思っていた。
「あれだけ泣かせたことが、幸せに繋がるのですか?」
真衣は詰問した。